第1回有料映画館’19.08 · 09日 8月 2019
今村監督の「スタートライン」を、いくらでも出すので絶対に観たいという無農薬野菜生産者の坂梨さんと、そこまで言うならと腹をくくった私(中城)とで立ち上げた有料映画館「UーRYOシネマ」構想に、非常に好意的に対応していただいた今村監督。そのおかげで、聞こえる聞こえないの垣根を越えた(?)素晴らしい上映会が実現しました。本当にありがとうございました。後日、監督が送ってこられたメールの一部を紹介します。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 U-RYOシネマ「Start Line」上映に参加させていただきました。 3月の大倉山ドキュメンタリー映画祭で司会を担当された中城さんが 主催してくださった上映会です。 中城さんとはその後もメールのやりとりを交わし、 自宅の隣の部屋を解放してタダーズ・コーヒーや上映会など 手作り感満載なイベントを企画していることを知りました。 私は普段の上映会は主催者に手話通訳を依頼するのですが、 今回はあえて依頼しませんでした。 通訳を依頼しなくても誰かに「今何話しているの?」と聞けば 教えてもらえる場所と判断したからです。 手話通訳者を介することで、相手は通訳者がいないと ろう者に自分の言いたいことが伝わらないんだと思ってしまいます。 ろう者に慣れていない方は、話し相手(私)の顔ではなく、 通訳者を見てばかりとなります。 私も相手との距離を感じ、自信を失っていきました。 本当は「通訳者ではなく私を見てねー」と明るく言えばいいのですが、 それができませんでした。 双方が通訳者に頼ってしまうと、お互いに自分の言いたいこと、 聞きたいことを一生懸命伝えよう、 聞こうとする経験ができなくなってしまいます。 それはもったいないな~と思う時があります。 せっかく出会ったのに。 今回は、参加者の一人が一生懸命紙に話の内容を書いてくれたり、 自己紹介の時は、皆、ミニホワイトボードに名前を書いて 分かりやすく話してくださいました。 その気持ちが嬉しかったです。 もちろん、手話通訳者は、私にとってなくてはならない存在です。 情報をより正確に伝えなければいけない場合もあり、 大学時代の講義から身内の結婚式や葬式、 ビデオセミナー、講演会、映画制作の取材など様々な面で お世話になっています。 これからも私が死ぬまでお世話になる存在です。 しかし、手話通訳が必要な時と自分たちで コミュニケーションをとった方が より充実した時間を過ごせる時があると感じました。 今回の上映会では初対面の方が多く、私が理解できた情報量は 50%だったかもしれません。 でも、それ以上に参加してくださった おひとりおひとりの人柄が伝わってくる会で 充実度200%でした。 私は20代、30代は相手の話、 周囲の人たちの話が100%分からないと 自分だけが取り残されたように感じたり、 周囲の人たちに、どうして私が聞こえないことを知っているのに 分かりやすく教えてくれないの?配慮してくれないの? と不満を感じていました。 そして、聞こえる人たちとの溝を深めていきました。 4年前の自転車旅やLGBTの人たちとの出会い、 アスペルガーの友達の映画制作、 今年の5月のフランス・スイスの旅などを経て、 ようやくこの年になって、情報を100%得ること以上に 嬉しいものがあると気付きました。 人の笑顔だったり、相手と気持ちを通い合わせることができて 嬉しいという気持ちだったり、 ちょっとした優しさだったりという、 言葉ではないものです。 20代、30代前半も今と同じように周囲からもらっていたのですが、 私が気づかなかっただけでした。 中城さんと出会った大倉山ドキュメンタリー映画祭では手話通訳を通しての会話だったので、 距離を感じていたのですが、メールのやり取りや昨日の上映会でぐんと距離が縮まりました。 私に分かりやすく顔を向けてゆっくり話してくださったので その時は話の内容が分かりました。 坂梨さんも慣れると話していることが少し分かるようになりました。 人とつながるって嬉しいなあ、人と出会うって楽しいなあって 帰りの新幹線は幸せな気持ちにひたりながら だんだん暮れていく景色をボーッと眺めていました。 レモンサワーを飲みながら。 本当に本当に本当にどうもありがとうございました。 坂梨さんの大きな玉ねぎ、大切に料理に使わせていただきますね。 猛暑が続いています。 どうかお体をご自愛くださいね。 今村彩子