553 オンライン・タダーズの人々 「音響機器の中でも特にマイクは奥が深いです」




リアル・タダーズからオンライン・タダーズまで、音響を一手に引き受けていただいているプロの音響エンジニアのT.eng.氏。本日は、冒頭、ズームの設定の不具合で音声が出なかったことをきっかけとして、氏の専門であるマイクロホンの世界にご招待いただきました。T.eng.氏の丁寧な説明で、マイクの世界の奥深さに、素人である川崎の井上清三さんと、店主(中城)は関心したり驚嘆したり・・。とても中身の濃い時間を過ごすことができました。

ありがとうございました。T.eng,.氏の感想メールの一部をご紹介します。

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「音響機器の中でも特にマイクは奥が深いです。マイク沼です」

録音やPAの世界でもっとも重要なのはマイクのセッティングといってもよいです。同じマイクでもセッティングを変えると音が変わることはよくあります。ヴァイオリンの世界で言えばアマティ、ストラディバリ、ガルネリ・デル・ジェス、ヴィヨームのどれが理想なのかを議論するようなものなのです(いずれも全て弾いて自分の音を出せる奏者はハイフェッツやイザイ、クライスラー級だと思います)。
 ちなみに1万円ちょっとで買える「SHURE SM58」と30万円近くで買える「Neumann U87」に関して音の優劣はないと確信しております。もちろん構造的な意味で価格差は出ますが、価格的な「高級か低級か」ではなく音質や使用するシチュエーションにおいて「最善か無か」という観点において音質の差異がないと分かっているからです(もちろんアーティストやエンジニアの音の好みはあります…)。
 実際にSM58を本番のライブで使うアーティストは川久保さんや渡辺真知子さん、沢田知可子さんなど数多くいます。音響業界「標準」の音とその信頼性を知っている人が多いからです。私はライブで最善にセッティングされたSM58の音を知っていますし、SM58以外の「マイマイク」を持ち込む人もいます。マイマイクを持ち込むアーティストはSM58の特性を知ったうえで自分に合い、かつ「己にとって真に信頼できる機材は何か」を知っています。内沼さん(*店主注:レコーディング・エンジニアの巨匠:内沼映二氏)などのエンジニアも楽器に立てるマイクをあれこれ選びます。U87を弦楽四重奏用に立てることもよくあります。もちろん、全ての楽器にU87を立てるのは適切ではなく、SM58やSM57、AKG C414、サンケン…といった様々な特性のマイクが使われます。この辺のさらに細かいことは「音響映像設備マニュアル」や「プロ音響データブック」に記載されています。
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…とにかくオソロシイ世界です。